富士フイルムホールディングス

社外取締役座談会

多様な専門性・経験を生かして取締役会の実効性を高めステークホルダーの期待に応えていきます

富士フイルムホールディングスは、社外取締役の客観的視点や豊富な経験に裏打ちされた助言を通じて、取締役会での議論の充実と、経営の意思決定の透明性向上を図っています。今年も取締役会の実効性や、今後の成長に向けた課題・期待について社外取締役の皆さんに語り合っていただきました。

この6月に嶋田取締役が社外取締役として就任して、当社の取締役会に新たな専門性・経験が加わりました。取締役会メンバーの多様化が進む中で、取締役会における議論や雰囲気に変化は見られますか?

北村 取締役会で社外取締役に期待される役割は、それまで属してきた組織での経験や、それらを通して培ってきた専門性を背景にして、自分ならではの視点に立脚して議論に参加することです。すなわち、社外取締役の視点を通して新たな気づきを得ることが、取締役会の実効性を高めるうえで役立つと認識しています。私も自らの経験やバックグラウンドに基づく直感や判断力を大事にして、少しでも疑問に思ったことは発言するよう心がけています。それを期待して、議長が発言を促す機会も多いですね。そして今回、非常に多くの産業・分野・経営者をご覧になってきた嶋田取締役が就任されたことによって、さらに取締役会の議論が活発化することでしょう。

江田 確かに、当社の取締役会には自由に発言できる雰囲気がありますね。また、議題の事前説明の場でも、社外取締役の間で、異なるバックグラウンドに立脚したそれぞれの質問を聞きながら理解を深め、取締役会での議論の活性化に役立てています。また、当社の強みであるスピードを重視する文化は変わっていない一方で、私が就任した2年前と比べて、事業戦略とM&Aなどの投資がよりしっかりと紐づけられ、かつオープンに議論されるようになってきたと思います。

嶋田取締役はどのようにお感じですか?当社の取締役会に参画するにあたって、抱負をお願いいたします。

嶋田 ここ5~6年の間に、世界の大きなトレンドが急速に変化しています。AIやデジタル化といったテクノロジーが相互に影響を与えながら、加速度的に技術的発展を遂げています。また、中国の急成長に伴い、世界経済の重心が変わりつつあります。その結果、これまで存在したジオポリティックスという概念が、政治経済の分野だけでなく、技術やヘルスケアといった分野まで拡大し、ジオテクノロジー・ジオヘルスという視点が重要性を増しています。さらに、異常気象やパンデミックといったグローバルな課題が顕在化され、世界の人々の目に見えるようになってきました。私が行政の現場で感じていたのは、そうした大きなトレンドや変化を受けて、これまで前提としてきた世界の秩序やルールなどが急速に変わらざるを得なくなっているということです。こうした動きは、当社のようなグローバル企業にとってもまさに当てはまることで、今まで当然のこととして考えていた事業活動の基盤が大きく変わりつつあり、それはリスクでもありますが、機会にもなり得るわけです。私が行政の立場から、いろいろ感じてきたことや見てきたことを踏まえて、当社の発展に貢献したいと思います。

嶋田 隆 氏

元 経済産業省事務次官

経済産業省官房長、同省通商政策局長、同省事務次官などの要職を歴任し、世界的な産業構造の変化に対応するため、新たな産業政策や通商政策を推進してきた豊富な経験と高い見識を有する。

取締役会での議論に参加するうえで、会社からは十分なサポートがなされていますか?

川田 社外取締役として最も重要な使命は、取締役会の意思決定の妥当性・適正性について、その確保がなされていることを検証し、担保することと考えています。社外の立場であっても、情報のギャップを埋めるために、事業説明会や事業所の見学など、理解を促進するためのさまざまな機会があります。取締役会に関しては、事前に関連資料が共有されるので、それをしっかりと精査する時間も確保されています。また、取締役会の事前説明会において、議題についての理解をさらに深め、社外取締役の間で意見を交わすこともできます。要望を挙げるとすれば、現場の声を参考にしながらより一層充実した審議をするために、今後も、執行役員や従業員とのコミュニケーションの場を継続的に持ちたいですね。

北村 従来の事業説明会に加えて、昨年は新たに人材開発やIT戦略、ESG推進に関する取り組み等についての説明会が行われました。このようなさまざまなテーマの説明会は、富士フイルムグループをよりよく理解したうえで、当社にとっての最適な判断をするために非常に役立っていますね。

指名報酬委員会(以下、委員会)において、CEOサクセッションプランはどのように議論されていますか?

川田 現在、東証一部上場企業の過半数が委員会を設置していますが、確固たるプロセスや仕組みはまだ確立されておらず、どの企業も試行錯誤している状況だと認識しています。当社では、後継者に求められる人材要件やその候補者リストに基づいて具体的かつ深く入り込んだ議論をしています。委員会は諮問機関としての位置づけですが、取締役会の意思決定に資するものとして、客観性・透明性を担保できる活動を継続し、さらに議論を充実させていきたいと思います。

川田 達男 氏

セーレン(株)代表取締役会長

長年にわたり、総合繊維メーカーの経営者として、ビジネスモデルの転換、イノベーションの創出、組織変革を実現してきた豊富な経験と高い見識を有する。当社の指名報酬委員会の委員長を務める。

北村 現CEOである古森会長のサクセッションプランが、当社にとって重要課題の一つであるという認識を強く持っています。川田取締役がお話しされた通り、選考過程における妥当性や透明性を担保すべく、後継者人材に対する考え方について委員会がその機能を発揮していく必要があります。スキルや経歴などの客観データに加えて、古森会長から、かなり率直に候補者の実績・評価について聞いており、我々の判断材料がしっかりと提供されていると思います。それが充実した審議につながっています。

委員会のもう1つの議題である、役員報酬制度についてお聞かせください。

北村 役員報酬制度は、単に足元の成果や短期的な業績を反映するのではなく、中長期的な業績に連動するべきだと思います。従来のストックオプション制度にもそうした考え方を反映してきましたが、現在導入を検討中の新株式報酬制度は、それをさらに進化させたものとして評価できると思います。

川田 役員に対して適切なインセンティブを与えるだけでなく、中長期的な投資を含む適切なリスクテイクを促すことができるような仕組みを織り込むことが、役員報酬制度における重要な課題であると考えています。

当社では積極的に成長に向けた投資を行っていますが、特にM&Aについて、取締役会での意思決定プロセスをどう評価されますか?

北村 昨年は富士ゼロックスの完全子会社化や、日立製作所の画像診断関連事業の案件といった大型案件に関わる意思決定がありました。どの案件においてもM&A投資委員会での十分な議論を経たものが、取締役会において買収価格の妥当性、シナジーやリスクの面からもしっかりと審議されています。

江田 M&Aにおいては、投資決定時の判断プロセスだけでなく、買収後に計画通りの業績貢献を果たしているかが重要なので、買収後の統合プロセスに関する情報も取締役会で共有・評価していきたいと思います。

北村 仰る通りです。一般的にM&Aでは、買収成立自体を成果とみる風潮もありますが、本当に重要なのは買収後の実績とその検証です。富士ゼロックスは完全子会社化の前から、当社経営陣によるガバナンス強化や業務改革の強化を通して、業績面での改善が顕著に現れていましたが、完全子会社化と同時に発表した成長戦略および施策に基づいて、統合後のプロセスがさらに進捗していると思います。

北村 邦太郎 氏

三井住友信託銀行(株)取締役会長

長年にわたり、強いリーダーシップをもって大手金融機関の経営者を務め、金融・財務・資本市場における、豊富な経験と高い見識を有する。当社の指名報酬委員会の委員を務める。

コロナ禍における当社の事業を通じた社会貢献について、どのように評価されていますか?

江田 当社は事業を通じた社会貢献というものが企業文化の中にしっかりと根付いていると思います。事業を通じた社会貢献と言っても、コロナ禍だからと言って急にできるものではなく、当社は以前から社会貢献という観点をもって企業活動を継続してきたからこそ、今、大きな貢献を果たせているのです。これは、社員一人ひとりが富士フイルムグループはどうあるべきか、何が大切なのかといった価値観を、しっかりと全員で共有していることも背景にあるのでしょう。市場が大きく変化する中で、短期の利益だけではなく、長期にわたる従業員のウェルビーイング(幸福)や社会への貢献を大事にしながら、次の時代を作っていける組織がステークホルダーから評価されるトレンドが生まれつつあります。そうした意味で、世界の企業が短期視点の株主至上主義から大きくシフトしようとしている時に、市場をリードできるポジションにあるのが、当社だと思います。ステークホルダーからのさらなる期待に応えられるよう、私たち社外取締役も全員で力を合わせて、当社の発展に貢献していきたいと思います。

江田 麻季子 氏

世界経済フォーラム 日本代表

グローバル企業の経営者として、新市場の創出、グローバルな人材の育成を実現し、現職では、地域・産業などの課題に対して世界規模での改善に取り組んできた豊富な経験と高い見識を有する。