CSR活動報告│新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への取り組み

簡便・迅速なPCR検査を実現する全自動PCR検査システム

検査時間の大幅短縮と検査作業負荷の軽減により、PCR検査の拡充に貢献

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富士フイルム和光純薬の全自動遺伝子解析装置「ミュータスワコー g1」は、自動で遺伝子解析を行うことができる装置で、これまでは結核などの診断に用いられてきました。本装置は、検体や試薬を装置にセットする数分の作業のほかは、全自動で遺伝子を検出できるため、短時間での診断が可能な上、熟練した検査員でなくても検査が行えます。今回この機器が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCR検査件数の増大に大きく貢献できると考え、2020年2月、本装置でCOVID-19のPCR検査を可能にするための試薬の開発を開始しました。

通常は1人の研究者が1つの試薬の開発を担当しますが、できるだけ早く開発するため、複数の研究者がそれぞれの専門分野ごとに役割分担をして同時に開発を進め、最後に全体を統合することで、通常なら年単位でかかる新規試薬開発を約2カ月半で完了しました。また、本来は開発が進んでから行う製造・販売についても、開発と同時に体制を構築し、様々な部署が一丸となって2020年5月8日の発売にこぎ着けました。その結果、今回開発した試薬「ミュータスワコー COVID-19」と本装置を組み合わせて使用することで、これまで4~6時間かかっていた検査時間を約75分と大幅に短縮しました。このシステムの導入により、誰が検査しても一定の検査品質を実現し、検体の取り違えや検査員の感染など手作業で起こりうるリスクも軽減され、検査体制の拡充につながります。

発売後の反響は非常に大きく、技術的な質問も多く寄せられているため、質問への回答を迅速に行うなど、アフターフォローにも力を入れています。今後、さらに検査可能な項目を増やし、より多くの病気の診断・治療に貢献していきます。

従来のPCR検査

COVID-19のPCR検査には5つの段階がある。

②は採取した検体からウイルスの遺伝子(RNA)を取り出し、不要物を取り除く工程、③で酵素を用いてRNAをDNAに変換(逆転写)し、④でウイルスのDNA遺伝子を増幅させ、分離して観察する。

①~④を経て初めて、ウイルスの有無を判定することが可能となる。

新型コロナウイルス用遺伝子検出試薬「ミュータスワコーCOVID-19」を用いたPCR検査システム

特徴

①検査時間は約75分(従来方式と比べて最大約5時間を短縮)
②検査工程の大部分を全自動で実施、作業負荷を軽減
③検査者の熟練度に左右されることなく、安定した検査品質を実現

※ 本ページは、サステナビリティレポート2020と同内容を掲載しています。