CSR活動報告│新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への取り組み

高い技術力と生産管理能力でワクチンの開発・製造を支援

世界各地でCOVID-19ワクチンの開発や接種が進んでいます。有効性の高いワクチンの接種が拡大することで、COVID-19の感染拡大や重症化を防ぎ、医療崩壊などの社会リスクや行動制限の軽減につながることが期待されています。
富士フイルムグループは、質の高いワクチンを一刻も早く安定供給できるよう、ワクチン候補の原薬製造に全力で取り組んでいます。

2020年7月、バイオ医薬品の開発・製造受託会社であるFUJIFILM Diosynth Biotechnologies(FDB)は、米国バイオテクノロジー企業Novavax, Inc.(以下、ノババックス社)より、同社が開発するCOVID-19のワクチン候補「NVX-CoV2373」の原薬製造を受託しました。「NVX-CoV2373」は新型コロナウイルスの遺伝子情報をもとに作りだした抗原を有効成分に用いた「組み換えタンパクワクチン」です。

FDBでは同年7月中に、米国ノースカロライナ拠点で「NVX-CoV2373」の原薬製造を開始。加えて、テキサス拠点でも原薬製造を受託、同年12月に製造を開始しました。また、米国政府がCOVID-19ワクチン・治療薬の開発を目的として立ち上げた官民連携プロジェクト「Operation Warp Speed」の一環として、テキサス拠点の一定レベルの製造キャパシティーを米国保健福祉省傘下の生物医学先端研究開発局のために2021年末まで確保する契約を締結しました。2020年8月には、英国政府が調達する「NVX-CoV2373」に関して、FDBの英国拠点が原薬製造を受託し、2021年2月に製造を開始しました。英国拠点では、最大1億8,000万回分/年の投与量に相当する「NVX-CoV2373」の原薬製造が可能です。

日本国内では富士フイルムが2020年10月、バイオテクノロジー企業のVLP Therapeutics Japan(以下、VLP Therapeutics社)と、同社が開発するCOVID-19ワクチンの製剤の製造受託契約を締結しました。同社のCOVID-19ワクチンは、有効成分である自己増殖RNA(レプリコン)*1を内包した脂質ナノ粒子製剤です。今後、富士フイルムは、脂質ナノ粒子製造装置を保有する富士フイルム富山化学の「701工場」など、グループが保有する製造設備・インフラを活用して、VLP Therapeutics社が開発するCOVID-19ワクチンの製剤のプロセス開発から治験薬製造まで受託していきます。

富士フイルムグループのCOVID-19ワクチン開発・製造支援活動*2
  • *1 RNA(リボ核酸)は、塩基や糖、リン酸から構成される生体高分子で遺伝情報を司る核酸の一種。投与後に体内で一過性のRNA増幅が起こる機能を付与したものを自己増殖RNA(レプリコン)という
  • *2 2021年6月時点
ワクチンの開発・製造の支援において中核を担う
FUJIFILM Diosynth Biotechnologies

2011年に富士フイルムグループに加わったFUJIFILM Diosynth Biotechnologies(FDB)は、英国・米国・デンマークに拠点を有し、抗体医薬や組み換えタンパク医薬、遺伝子治療薬、ワクチンなどあらゆる種類のバイオ医薬品の開発・製造受託を行っています。バイオ医薬品は動物細胞や微生物が作るタンパク質を主成分としており、FDBは動物細胞・微生物を培養する高度な技術を保有。この分野で30年以上にわたる実績・経験を持つリーディング・カンパニーとして、細胞株開発からプロセス開発、治験薬製造、商業生産まで包括的な受託サービスを提供しています。

一方、富士フイルムは、一定条件を保って製造する技術、高度な品質管理技術など、写真フィルム分野で培った高い生産技術を持っています。FDBの細胞培養技術に富士フイルムの生産技術を加えることで、有用なタンパク質を効率よく生産し、バイオ医薬品をこれまで以上に大量に製造することが可能になりました。

FDBではこうした強みを生かしてCOVID-19ワクチンの開発・製造を支援し、ワクチンの迅速かつ安定的な供給に貢献していきます。

高い生産性を誇るFDBの細胞培養設備

高度封じ込め技術により安全な生産体制を実現するモバイル・クリーンルーム

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※ 本ページは、サステナビリティレポート2021と同内容を掲載しています。