2011年 「緑の協力隊 第14次隊」 リポート
「緑の協力隊」は、富士フイルム労働組合が中国・内蒙古自治区のホルチン砂漠で毎年行っている植林活動で、2011年で14回目を迎えました。今回の活動は、7月31日~8月4日の5日間。日本からは、富士フイルム労働組合員16名(OB含む)と富士フイルム生協2名の合計18名が参加し、中国からは現地法人である富士フイルム(中国)投資有限公司(以下FFCN)・富士膠片印版有限公司(FFPB)・富士膠片印版(中国)有限公司(FFPS)・富士膠片光電(天津)有限公司(FOTJ)・富士膠片精細化学(無錫)有限公司(FFCW)からの合計22名のほか、FFCNが中国で募集した一般の方6名も参加してくださいました。そして他社からも2名にご協力いただき、48名という過去最多の参加者が一緒に汗を流しました。
ホルチン砂漠ってどんなところ?
近年の急激な乾燥化でできた、北海道に匹敵する大きさの砂漠です。
ホルチン砂漠は、北海道旭川市と同じ北緯42度に位置する中国・内蒙古自治区にあり、面積もほぼ北海道と同程度の大きさがあります。日本から一番近い砂漠(国内砂丘などを除く)であり、近年、日本にも大量に飛んでくるようになった黄砂の一因にもなっている砂漠です。
ステップ気候帯で、年間降水量は500mm以下にとどまりますが、実は、30年ほど前までは砂漠ではありませんでした。放牧により家畜が草を食い尽くし、その状態のまま放置された結果、砂漠化してしまったのです。
砂漠化は、現地農民の生活を経済面・環境面で圧迫するだけでなく、黄砂の発生のように国を超えた環境被害をもたらす一因にもなっています。
成田空港から約3時間のフライトで瀋陽に到着。瀋陽よりバスで揺られること約3時間。大きな交通渋滞も無く滞在地となる后旗(カンチカ)へ到着した。
7月31日 : 移動(成田→沈陽→后旗)
8月1日 : 砂漠化の現状を見学、緑化活動-草方格作り
8月2日 : 緑化活動-障子松植林
8月3日 : 緑化活動-植林地の整備、現地でのワークショップ
8月4日 : 移動(沈陽→成田)
砂地へ碁盤状にワラを埋め込む「草方格作り」
緑化活動1日目。早朝よりバスに乗り、午前中は砂漠化の現状把握のための見学を行った。過去は森だった北海道ほどもある広大な場所が、放牧によって砂漠化してしまったのだ。人間が生活していく上では仕方がなかったのかもしれないが、その代償の大きさに参加者一同言葉を失った。
午後は、草方格作りを行った。草方格とは、乾燥した稲のワラを利用して、約1m四方のワラを碁盤の目のように並べて砂に埋め込んだもので、砂の移動を防ぐ効果がある。砂漠化は、砂の移動が大きな要因となるため、このような草方格を作る意義が大きいということだ。
作業は、(1)細かいワラを取り除き、一定以上の長さのワラをそろえて束を作る、(2)ワラの束を運び、マス目状に並べる、(3)シャベルを使い、束を直立させた状態で埋め込む、という3工程だ。炎天下の中、参加者全員で力を合わせて252マスの草方格を2時間かけて完成させた。
掘る、埋める、バケツリレーで1,600本!「障子松の植林」
緑化活動2日目。早朝よりバスに揺られ、「障子松」の植林のために瓦房(ガボウ)へ。障子松は、防風林の役割を果たすもので、砂の流出を防ぎ、植物の種を根付かせるために重要なものである。
富士フイルム労働組合では、2008年からこの地で障子松のユニット植林を開始し、その森を「富士フイルム労働組合の森」と呼んでいる。毎年1ヘクタールの植林を続け、その広さは2010年に3ヘクタールに達している。
今回は、1日で1,600本の障子松の苗木を植林。工程は、(1)植える場所まで苗木を運ぶ、(2)シャベルで穴を掘る、(3)苗木を埋める、(4)バケツリレーで苗木の箇所に水をやる、という単純なことの繰り返しであるが、1,600本となると体力的にかなりハードだ。学生時代の部活動をほうふつさせるような「加力(チャーヨウ=頑張れの意」」という掛け声で参加者同士が励まし合い、やっとのことで植え終えることができた。
緑を守り続けることの難しさを実感「植林地の整備」
緑化活動3日目。午前中は、4年前の活動で植林した障子松の周りに生い茂った雑草を、除去する作業を行った。植えた後でこのように根気よく手入れを続けていかなければ、緑は育たない。植えることだけでは終わらない、緑化の大変さをあらためて痛感した。
同時に、4年が経過し、立派に育っていた障子松を見て、昨日植林した1,600本も無事に育つことを強く願った。
午後は、参加者全員が複数のグループに分かれてワークショップを行った。テーマは、「緑化には何が必要か」。「水」「苗木」といった基本的に必要なものについての議論から始まり、幅広い内容で意見が活発に交わされた。印象的だったのは、日本隊・中国隊ともに、重要なポイントとして「そこに住む人々の意識」を挙げていたことだ。数日前には無かった実感が、今回の緑化活動を通して自分たちに根付いていた。
最終日は、瀋陽からのフライトで成田に到着、空港での解散式を行った。3日間の緑化活動は、体力的には非常に疲れたが、それ以上に得るものが多く、参加者はみな、目に見えて出発時よりもたくましく、達成感に満ちあふれた表情をしていた。
今回私は、事務局として参加したが、自分自身の目で見て、体験したことを一人でも多くの仲間に伝え、緑化活動の重要性を広めていきたいと思っている。
VOICE
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「緑化はボランティアの一方通行ではなく、現地の方々の理解と協力を得て、継続的に行っていくべきもの」という緑化ネットワークの方の言葉を聞いて、ボランティア活動のイメージが変わりました。これから自分にできる社会貢献が何かを考えたいと思います。
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砂漠化の現状や緑化についての知識を身に付け、緑化の意義を少しでも理解できたこと、実際の緑化の大変さや環境の過酷さを体験できたことで、今の自分の生活や考え方を見つめ直す良い機会となりました。この貴重な経験を今後の生活に生かしていきたいと思います。
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実際に行ってみると、確かに日本とは別世界で、苦慮する部分もありましたが、最高の仲間たちとの出会いや、中国の方々との交流や「緑化とは何か」を学んだことが、一生の思い出となりました!!
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今回の活動は本当に小さなことだと思いますが、地球の砂漠化を止めるために少しでも協力できたと思うとうれしいです。また、本当に素敵なメンバーに恵まれ、毎日朝から晩まで楽しく過ごすことができ、最高のツアーになりました。多くの人に参加をおすすめしたいです。
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「植林≠緑化」ということを肌で感じ、緑化活動の難しさを痛感しました。異国の砂漠を緑化するという活動に「日本人」として参加できたこと、そして、何より14次隊の一員として活動できたことを誇りに思います!