近年、持続可能な開発目標(SDGs*1 )やパリ協定*2 など、社会課題解決を目指した国際的な長期目標や提言が相次いで発表されており、そうした社会課題解決のプレーヤーとして、企業への期待がますます高まっています。CSR計画「Sustainable Value Plan 2030(SVP2030)」では、こうした背景から、SDGsやパリ協定など、グローバルな目標達成への貢献を目指し、2030年度をターゲットとした長期目標を設定しました。
2014年度~2016年度の中期CSR計画「Sustainable Value Plan 2016(SVP2016)」では、CSRを法令順守という受け身ではなく、社会課題の解決と事業成長の機会ととらえ、「事業を通じた社会課題の解決」という目標を明確に宣言しました。その姿勢は、社外からも高く評価されています。しかし、「社会課題の解決」という大きな目標に対して、中期計画の3年という周期で成果を出していくことは簡単ではありません。そのため、今後の活動継続と同時に、目標設定の発想を転換する必要があると考えました。
SVP2030は長期的な計画としたことで、フォアキャスティング(積み上げ方式)ではなく、未来のあるべき姿から落とし込んだバックキャスティングによる目標設定が可能となり、よりチャレンジングな施策も取り入れることができました。
また、グローバル企業として果たすべき社会的責任を明確にするために、SDGsの17目標・169ターゲットについて、富士フイルムグループの事業機会と社会への負荷について検討しました。その結果、SDGs達成に向けて大きく貢献できる目標を17の中から11を特定し、具体的な取り組みを目標に盛り込みました。
SVP2016では、「事業を通じた社会課題の解決」(機会)と「事業プロセスにおける環境・社会への配慮」(リスク)を分けて重点課題を設定しましたが、SVP2030では、「環境」「健康」「生活」「働き方」の各分野の中でその両面の影響を考慮しています。例えば「環境」の「1.気候変動への対応」では、当社グループの事業活動によるCO2排出量の削減とともに、環境性能に優れた製品・サービスを開発・普及させることで社会でのCO2排出量を削減するとして、機会とリスクの両面からの目標を掲げています。
さらに、グローバルに事業を推進していく上で、サプライチェーン全体にわたる環境・倫理・人権などのCSR基盤強化に加え、オープン、フェア、クリアな企業風土のさらなる浸透を目指すガバナンス強化を盛り込み、企業活動全体で取り組む6分野・15重点課題を設定しました。
これら重点分野のうち「環境」分野では、2030年度までに達成する数値目標を設定し、自社製品のライフサイクル全体での排出削減と自社製品・サービスの普及による社会でのCO2排出削減への貢献に取り組んでいます。
SVP2030で掲げている長期目標は、現在の事業活動を起点に考える従来の「インサイドアウト」の視点から一歩進めて、「社会課題」を起点に、事業のあるべき姿・製品・サービスを考えていくという「アウトサイドイン」の発想から生まれました。持続可能な社会を実現するために、どのような製品・サービスが必要で、そのためにはどのような技術が求められるのか。製品・サービス(=アウトプット*3 )の先にある富士フイルムグループの持続可能な社会への貢献(=アウトカム*4 )を形にしたのがSVP2030であり、自社グループの成長と社会課題解決をともに成し遂げることが最終的な目標です。
今後も引き続き、SVP2030の目標達成に向けて、社会の変革をリードする製品・サービス・技術開発によって新たな価値を創出することで、社会課題の解決により一層貢献すると同時に、企業価値向上を図っていきます。