富士フイルムホールディングス株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長・CEO:後藤 禎一)は、2030年度を最終年度とする中期経営計画「VISION2030」を策定しました。「VISION2030」の下、収益性と資本効率を重視した経営の推進により、富士フイルムグループの企業価値をさらに高め、世界TOP Tierの事業の集合体としてさまざまなステークホルダーの価値(笑顔)を生み出す会社へ進化することを目指します。なお、成長領域であるバイオCDMOおよび半導体材料を中心に、2024年度から2026年度までの3年間で総額1.9兆円※1を投資し、事業成長を加速させていきます。
当社は、2017年に制定した、2030年度をターゲットとするCSR計画「Sustainable Value Plan 2030」(以下、「SVP2030」)において、「事業を通じた社会課題の解決」と「事業プロセスにおける環境・社会への配慮」の両面から、4つの重点分野「環境」「健康」「生活」「働き方」と、事業活動の基盤となる「サプライチェーン」「ガバナンス」における目標を設定し、サステナブル社会の実現に貢献することを目指しています。今回策定した「VISION2030」は、「SVP2030」の目標を実現するための具体的なアクションプランです。
「VISION2030」では、2030年のあるべき姿を「収益性と資本効率を重視した経営により、富士フイルムグループの企業価値をさらに高め、世界TOP Tierの事業の集合体としてさまざまなステークホルダーの価値(笑顔)を生み出す企業」と定めました。その実現に向けて取り組むべき重点項目として、①成長投資と収益性重視、②資本効率の向上、③研究開発マネジメント、④投資リターンの確実な創出、を設定し、セグメントごとに適切な戦略を描くとともに、事業ポートフォリオマネジメントを強化していきます。
事業ポートフォリオマネジメントでは、市場の魅力度と自社の収益性の2軸で各事業を「基盤事業」「成長事業」「新規/次世代事業」「価値再構築事業」に分類。「価値再構築事業」と位置付けた事業に対しては、新たな戦略を策定・遂行し、「基盤事業」へのシフトを図ります。また、バイオCDMOや半導体材料などの「新規/次世代事業」「成長事業」を中心に、前中期経営計画「VISION2023」を上回る1.9兆円※1の成長投資を実施します。
これらの取り組みにより、2026年度に売上高34,500億円、営業利益3,600億円、当社株主帰属当期純利益2,700億円を目指します。また「VISION2030」の最終年度である2030年度には、売上高4兆円、営業利益率約15%以上、さらに2027年度以降にバイオCDMOで積極投資フェーズから利益獲得フェーズに移行することで、ROE10%以上、ROIC9%以上を達成することを目指します。
当社は創立90周年の節目にあたり、グループパーパス「地球上の笑顔の回数を増やしていく。」を制定しました。パーパスの実現に向けてアスピレーション(志)を持って「VISION2030」を実行し、持続的な企業成長を目指します。
中期経営計画「VISION2030」の概要
1. 財務目標
2023年度予想 | 2024年度 | 2026年度 | 2030年度 | |
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売上高 | 29,600億円 | 31,000億円 | 34,500億円 | 4兆円 |
営業利益 | 2,770億円 | 3,000億円 | 3,600億円 | 営業利益率15%以上 |
当社株主帰属当期純利益 | 2,400億円 | 2,400億円 | 2,700億円 | ― |
ROE | 8.2% | 7.8% | 8.1% | 10%以上 |
ROIC | 5.6% | 5.4% | 5.8% | 9%以上 |
CCC | 122日 | 119日 | 112日 | ― |
2. 2030年の当社のあるべき姿・重点項目
当社は、利益率と資本効率を重視した経営により、富士フイルムグループの企業価値を高めるとともに、世界TOP Tierの事業の集合体として、世界を一つずつ変え、さまざまなステークホルダーの価値(笑顔)を生み出す企業となることを目指します。そのために、「VISION2030」では以下の4つの重点項目に取り組んでいきます。
(1) 成長投資と収益性重視
当社は、市場の拡大が期待され、成長領域であるバイオCDMOと半導体材料へ積極的に投資するとともに、利益率重視の事業運営により、すべての事業の営業利益率10%以上を実現していきます。
(2) 資本効率の向上
ROICをKPIとして重視し、投下する資本の効率を上げるとともに、資本政策を組み合わせることで、ROEの向上に取り組みます。
(3) 研究開発マネジメント
事業と近接した領域で、研究テーマの事業化を推進するリソースを増やすとともに、基礎研究では、新事業の創出につながるテーマをより厳選し事業化の確度・スピードを向上させていきます。
(4) 投資リターンの確実な創出
2021年に日立製作所より買収した医療画像診断事業の収益の刈り取りと、2023年にEntegris社より買収した半導体用プロセスケミカル事業のシナジー創出を進めていきます。また、バイオCDMOや半導体材料への積極的な設備投資による利益創出を確実に行っていきます。
3. 各セグメントの目標と戦略
各セグメントにおいては、2026年度をマイルストーンとして、以下の財務目標および基本戦略を設定しています。
(1) ヘルスケア
2026年度目標 売上高12,000億円、営業利益1,400億円、営業利益率11.7%
- メディカルシステム:幅広い医療機器ラインアップとAI/IT技術の掛け合わせによりプレゼンスを向上させるとともに、AI/ITを活用したリカーリングビジネスを拡大させます。さらに、健診センター「NURA」を中心とする健診ビジネスを加速させていきます。
- バイオCDMO:2024年度から2026年度にかけて、大型新規設備を円滑に立ち上げるとともに、中小型設備は需要に応じた柔軟な生産体制の構築を進めます。大型設備での売上比率を上げることで、安定的かつ高い収益性を実現し、2027年度には事業単独でのフリーキャッシュフローを黒字化。2030年度には売上7,000億円まで成長させていきます。
- LSソリューション:iPS細胞分野において、細胞株の提供やライセンス供与により、顧客の細胞治療薬の開発進捗に応じたマイルストーン収入を獲得すると同時に、開発受託によるトラックレコードを蓄積し、iPS細胞を用いたCDMOビジネスを構築。また培地分野では、抗体医薬製造用を中核として、需要に応じた適切な設備投資により事業成長と収益性向上を図るとともに、グローバルの生産拠点拡大およびサプライチェーンの強靭化により、製品供給の安定化を図ります。さらに次世代の細胞・遺伝子治療薬向け製品開発と顧客サービスを強化していきます。
(2) エレクトロニクス※2
2026年度目標 売上高4,700億円、営業利益700億円、営業利益率14.9%
- 半導体材料:大手半導体メーカーの米国・欧州・アジアでの拡大に対応した積極投資や、高いシェアを持ち当社の強みとなっている製品群を基軸とした最先端ノードでのビジネス獲得を推進します。また、経済安全保障の観点から、地政学リスクを考慮したサプライチェーン網を構築するとともに、新興市場への早期参入を進めていきます。さらに、幅広いポートフォリオと技術を生かした高付加価値製品を開発していきます。2023年に買収した半導体用プロセスケミカル事業とのシナジー創出を加速し、2030年度に5,000億円の売上を目指します。
- その他エレクトロニクス材料:OLED向けの反射防止材料、タッチセンサー材料、発光層材料など成長市場に向けたビジネスに加え、マイクロOLEDメーカー・AR/VRメーカー・モビリティメーカーに対し、課題解決に繋がる複数の新規材料を提案し、業界ナンバーワンのポジションを確立します。さらに、通信・エネルギー市場においても、コア技術や知見を活用し、顧客ニーズをとらえた新規材料の提案・実装を行っていきます。
(3) ビジネスイノベーション
2026年度目標 売上高12,750億円、営業利益900億円、営業利益率7.1%
- ビジネスソリューション:中堅・中小企業向けの自社ソリューションなどを核とした「IT/業務ソリューション」で成長を図りつつ、「基幹ソリューション」の拡大で新たな収益基盤を獲得します。また、各ソリューションで蓄積したデータを基にした業務最適化の支援など、さらなるビジネス成長を実現していきます。
- オフィスソリューション:トップレベルのマーケットシェアを有するA3カラー領域に注力しながら、環境対応と生産基盤の強化に加え、販売効率をさらに上げていくことで、収益性を維持・向上させていきます。また、欧州各国の有力代理店による当社複合機の新規取り扱いを開始します。
- グラフィックコミュニケーション:アナログ印刷では高付加価値な無処理版の拡販に集中し、収益性を改善します。デジタル印刷では、成長市場である商業印刷のDX化に投資し、お客さまのデジタルシフトをサポートするデバイス・DXソリューションを展開します。
(4) イメージング
2026年度目標 売上高5,050億円、営業利益1,050億円、営業利益率20.8%
- INSTAXでは、唯一無二のアナログ価値に最新デジタル技術を融合した魅力的な新製品を持続的に投入し、ユーザー層を拡大するとともに、イベントやビジネス需要の取り込みを促進します。
- デジタルカメラでは、「Xシリーズ」「GFXシリーズ」の2ライン戦略をさらに強化。撮影領域や映像表現の幅をさらに拡大し、市場でのプレゼンス向上を図っていきます。
- 独自の技術アセットや映像に関するノウハウの組み合わせにより、社会課題の解決につながる新規ビジネスの創出を推進します。特に、画像処理技術を生かしたDXソリューションの提供など、BtoB分野での成長も拡大させていきます。
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コーポレートコミュニケーション部 広報グループ