富士フイルムホールディングス

CSR活動報告│健康

【重点課題1】アンメットメディカルニーズへの対応

“根治治療”を可能にする再生医療製品の開発

有効な治療法が見つかっていない疾病治療の解決策として期待されているのが、「再生医療」です。富士フイルムグループは、再生医療のリーディングカンパニーを目指して、積極的な研究開発やM&Aを実施してきました。これにより、再生医療に必要な3要素(細胞、足場材、培地/サイトカイン)をすべて保有する世界で唯一の企業となり、事業拡大を積極的に進めています。

グループ会社であるジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)は、患者さんから採取された細胞を自社で培養し、医療機関に提供する再生医療製品メーカーです。日本初の再生医療等製品となる自家培養表皮「ジェイス」や自家培養軟骨「ジャック」など、皮膚・軟骨領域の製品を開発してきました。最近では、角膜やがん領域にも進出。がん領域では名古屋大学、信州大学と特許ライセンス契約を締結し、がん細胞に対する攻撃性を高めたT細胞(免疫細胞の一種)を使ってがんを治療するCAR-T療法の治療薬開発を始めています。さらに、眼科領域の再生医療等製品では国内初の申請として、角膜上皮幹細胞疲弊症*1 の治療を目的とした、自家培養角膜上皮(開発名:EYE-01M)の製造販売承認申請を厚生労働省に行い、再生医療製品の領域を広げています。

またJ-TECは、製品開発で蓄積したノウハウやシステムを活かして、再生医療製品の受託開発、培養技術を応用した研究支援キットなども展開しています。2017年に名古屋市立大学病院より、白斑や難治性皮膚潰瘍などに対する自家培養表皮移植の臨床研究に用いる培養表皮の製造を受託していますが、2019年4月には蒲郡市民病院からも受託できるようになりました。蒲郡市は、2013年度に「蒲郡市ヘルスケア計画」を策定、「再生医療のまちづくり」の活動を積極的に推進しており、J-TECや蒲郡市民病院も本活動に参画し、市民への再生医療の普及・啓発を行ってきました。こうした経緯から、蒲郡市民病院は2018年に名古屋市立大学病院と「再生医療の実施に係る相互協力に関する協定」を締結。2019年3月末より白斑や難治性皮膚潰瘍などに対する自家培養表皮移植の臨床研究を開始しています。

再生医療はまだ発展途上の分野です。富士フイルムグループは、今後の開発を加速し市場を拡大していくために、自社グループだけではなく他社・団体とも積極的に協働していくことで、再生医療の産業化をリードしていきます。

*1 角膜上皮幹細胞疲弊症:結膜と角膜の境界領域である輪部に存在する角膜上皮幹細胞が、先天的もしくは外的要因によって消失することで発症する疾患。角膜が混濁し、視力の低下や、眼痛などの臨床症状が見られる

再生医療の事業展開

年度 内容
2013年 富士フイルムに再生医療研究所(現:バイオサイエンス&テクノロジー開発センター)と再生医療事業推進室(現:再生医療事業部)が発足
2014年 日本初の再生医療製品を開発・上市したジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)をグループ化
2015年 iPS細胞の開発・製造・販売のリーディングカンパニーであるCellular Dynamics International,Inc.(現:FUJIFILM Cellular Dynamics,Inc.(FCDI))をグループ化。創薬支援事業に参入
2017年 再生医療に不可欠な培地を扱う和光純薬工業(現:富士フイルム和光純薬(FFWK))をグループ化
2018年 培地のリーディングカンパニーであるIrvine Scientific Sales Company, Inc(現:FUJIFILM Irvine Scientific, Inc.(FISI))とアイエスジャパン(現:富士フイルム和光純薬(FFWK))をグループ化

有効な治療薬として期待されるバイオ医薬品の普及

FDBでは多品種少量化生産のニーズに応えるため、製造する薬剤の切り替え作業を最小限にできる生産設備の導入を進めている

バイオ医薬品は、副作用が非常に少なく高い効能があり、アンメットメディカルニーズの有効な治療薬として期待されています。富士フイルムグループは、写真フィルム事業で培った生産や品質管理の技術を生かし、バイオ医薬品のCDMO*1事業を推進しています。生産能力増強のために、中核となるFUJIFILM Diosynth Biotechnologies(FDB)の米国や英国の生産拠点に対して、積極的に設備投資を行っているほか、2019年8月には、米バイオ医薬品大手バイオジェン社の製造子会社であるBiogen(Denmark)Manufacturing ApSを買収しました。同社は大量生産設備を生かした生産を行っており、バイオ医薬品をグローバルに提供してきた経験と実績があります。FDBの少量~中量中心の生産設備に同社の大量生産設備を加えることで、生産能力を大幅に増強し、少量から大量までの幅広いニーズに対応可能になりました。さらに技術面でも、バイオ医薬品の開発・製造受託業界では初めて、培養から精製までの高性能・高効率な全工程連続生産システムを開発、2019年秋より本システムを用いたプロセス開発の受託サービスを開始予定です。富士フイルムグループは、バイオ医薬品の生産能力増強や高生産性技術の開発を進めることで、アンメットメディカルニーズを解決する顧客の新薬創出をサポートしていきます。

  • *1 CDMO:バイオ医薬品生産プロセスの開発受託及び製造受託を行う会社・組織。バイオ医薬品生産には高度な生産技術と設備が必要なため、製薬企業などがプロセス開発や製造を委託するケースが世界的に急増している