製品・サービスDXに関する取り組み

受診者個人による医療データの利活用を実現するプラットフォーム構築

富士フイルムは、がん検診を中心とした健診センター「NURA(ニューラ)」をインドやモンゴルに開設し、新興国での健診サービス事業の展開を強化しています。
「NURA」は、新興国の社会課題解決にデジタル技術で貢献する活動として高い評価を受け、経済産業省が推進する「インド太平洋地域サプライチェーン強靭化事業」に採択されました。
本事業では、情報サプライチェーンの強靱化を目的として、ブロックチェーン技術の活用により、データの改ざんを防ぎ、安全な環境下でのデータのやりとりを可能にするデジタルトラストプラットフォーム(DTPF)を活用しました。
受診者の同意をもとに、セキュアな環境下で、匿名化した個人の健診データを日本の研究・解析チームと共有、AI技術を用いて分析した結果を受診者へフィードバックする仕組みを実証しました。将来的には、健診データをもとにした疾病リスクの予測へと発展させることを検討しています。

下図は「NURA」におけるDTPFの将来像を示した図です。DTPFを用いて、これまで医療機関などが管理していた医療データを「個人がその価値を認識し利活用できるデータ」に転換し、「自身の医療データの資産化」の実現を目指しています。
具体的には、データ利用者からデータオーナー(受診者)へ個人データ提供依頼がなされると、データオーナーの同意に基づき個人データが提供され、データ利用の成果は分析レポートとしてデータ管理者およびデータオーナーにフィードバックされるという流れです。
データオーナー(受診者)自らが医療データを安全・合法に活用できることは、健診を受ける習慣をつけたり、自身の健康状態への理解を高め、受診者の能動的な健康行動を起こすことにも寄与すると考えられます。
本取り組みにおいては、「NURA」で次世代の医療データ連携ネットワークを実現し、今後具体的な利活用ケースを実証していきます。

デジタルトラストプラットフォーム(DTPF)とは

ヘルスケア領域では、医療、健康の主体者である個人を中心に、病院、健診センター、製薬会社、保険会社、国・行政など、多くのステークホルダーが関わり、かつ、課題への取り組みは、ある特定の国や地域に閉じず、グローバル社会としての連携の加速が益々求められています。一方で、現実的には、個人の医療・健康情報をはじめとする各種情報は、各ステークホルダーが運用するさまざまなプロセス、システムやそれぞれの国や地域の規制のもとで管理され、分断された状況が続いています。
メディカルシステム事業を通じた製品やサービスの提供に加え、新興国で展開強化しているがん検診を中心とした健診センター「NURA」や、富士フイルムグループ従業員向け健診施設「メディテラスよこはま」など健診センターの運営を通じて健康課題へのさらなる取り組みを進める当社としても、グローバルでの「医療健康情報連携」は重要課題のひとつとなっています。
この領域での課題についても、富士フイルムのDTPFをさまざまなステークホルダーにご利用いただくことで、事業、システム、国・地域の規制などの制約に対応したグローバルでのデータ共有と流通による「医療・健康のデジタルツインの実現」と、デジタルツイン上での全体最適によるグローバル課題の解決に貢献することを目指しています。
このデジタルトラストの仕組みは、当社提供のものに閉じず、「複数のトラストプラットフォームと相互連携することを前提」とし、個人などのデータ主権者はトラストが担保された状態で、ご自身の主権を保持したまま、異なるシステム間での医療履歴やPHRといったデータ利用を可能としていきます。