富士フイルムグループは、創業の事業である映画や写真フィルムの製造において、清浄な水を多く使用していたことから、早くから水投入量の削減、水のリサイクル利用に取り組んできました。近年、国際的な重要課題として水リスクへの関心が高まっていることも鑑み、さらなる水資源の削減・効率使用を進めています。各拠点での継続的な取り組みの結果、2018年度の水投入量は前年比で2.5%減少しました。目標「2030年度までに30%削減(2013年度基準)」に対し、すでに15%削減と順調に進んでいます。
水リスクにおいては、問題を抱える地域がさらに拡大する懸念も指摘されているため、2014年より、「水ストレス地域」状況と「水投入量を踏まえた事業影響度」の2指標マトリックスを使った「水リスク評価」の仕組みを構築し、富士フイルムグループの全事業拠点においてリスク評価を継続して実施しています。2018年度も、相対的に水リスクが高い拠点を中心に、水管理・削減取り組み状況の確認を行い、当社グループへの影響が低いことを確認しました。一方、製品・サービスによる「社会での水処理への貢献」に関しては、フィルトレーション材料提供によるかん水淡水化や廃水処理、印刷用の無処理CTP版によるお客さま先での水使用量削減などを着実に進めています。2018年度の貢献量は8.7百万トンで、「2030年度までに水処理量35百万トンに貢献」という目標に対し25%の進捗となりました。なお、2018年度実績の算定に際し対象を特に貢献度の高い内容に絞り込んだため、2017年度実績も再算定しています。今後も、社会での水処理用途を拡大して行くことで、さらなる製品・サービスをとおした社会での水処理貢献を高めていきます。
富士フイルムグループはこれらの「水リスクや機会」に対する取り組みを通じて、環境プラットフォーム「We Mean Business」の水イニシアチブ(IMPROVE WATER SECURITY)にもコミットしています。
富士フイルムグループでは、製造工程だけでなく製品のライフサイクル全体にわたり、資源の有効利用、廃棄物の削減に取り組んでいます。リサイクルや省資源を考慮した製品設計とともに、製造段階での廃棄物については、各地域の社会状況を踏まえた削減活動を進めています。日本では2011年度からグループ全体最適の視点による、廃棄物の有価物化・リサイクルの質向上の活動を、製造拠点だけでなく、オフィスや物流倉庫なども含めた事業全体で取り組んでいます。富士フイルムオプトマテリアルズ吉田工場では、原材料梱包材の材質変更により、これまで廃棄物となっていた梱包材を有価物として活用することで、廃棄物の削減につなげました。オフィスでは、富士フイルムビジネスイノベーションのソリューションを導入・活用することで、過去5年間の紙の使用量は毎年5~10%減となっています。
しかし富士フイルムグループとして新規事業を拡大する中、国際的なプラスチック輸入規制強化による排出プラスチックの有価物リサイクル化率の低下などにより、2018年度の廃棄物量は対前年2%増、「2030年度までに30%削減(2013年度基準)」という目標に対しても5%増の状況です。今後は、各拠点の廃棄物とその処理方法を解析し、事業ポートフォリオ変化も鑑み、富士フイルムグループ全体での廃棄物削減についての長期削減戦略の検討、具体的施策の立案と導入を進めます。
廃棄物 | リサイクル方法 |
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プラスチック(分別品) | パレット、配管、衣服、断熱材 |
プラスチック(混合品)、フィルター | 高炉原料 |
磁気テープ | 高炉原料、畳床材、断熱材 |
水酸化アルミ | 硫酸バンド(水処理用凝集剤) |
無機汚泥・研磨剤 | セメント、路盤材、建築用資材 |
有機溶剤 | 塗料用シンナー |
酸・アルカリ | 中和剤 |
可燃性廃棄物(混合物) | 固形燃料、発電・温水製造 |
蛍光灯 | グラスウール |
電池 | 亜鉛、鉄精錬 |
残飯・生ゴミ・有機汚泥 | 肥料、飼料 |
紙類(文書、空き箱など) | 再生紙 |
鉄、アルミ、銅など | 金属精錬 |
2004年度より、産業廃棄物の処理を委託している産業廃棄物処理業者を調査・評価する全社的システムを構築し、産業廃棄物処理委託先の協力を得ながら、厳正な調査・評価を実施しています。自治体の条例で義務づけられた産業廃棄物処理委託先の現地確認も、2006年度から同じシステムで対応しています。また、調査項目の改善や、調査担当者の力量を保証する調査・評価資格認定制度を2007年度に導入しました。現在、認定を受け調査・評価を行う者は、富士フイルムグループでは42名(2020年1月)となっています。必要に応じてシステムを見直し、継続的に改善を進めています。調査した委託先の評価はすべて、「産業廃棄物処理委託先調査・評価データベース」に登録し、富士フイルムグループ共通の廃棄物管理情報として、廃棄物管理ガバナンスの強化に役立てています。
富士フイルムグループは、資源投入量の削減状況を把握するため、独自に設定した「資源投入原単位の評価方法*1 」に基づき評価をしています。2018年度は、省資源化・小型化の環境配慮設計、生産拠点でのロス削減・端材の原材料への再利用を継続して進め、前年比で4%投入量が改善、「2030年度までに30%削減(2013年度基準)」という目標に対しては28%改善と高い進捗率となりました。
また、主力事業の一つであるドキュメント分野の複合機・複写機については、「使用済み商品は廃棄物ではなく貴重な資源である」との考えの下、お客さまが使用した商品を回収し、リユース・リサイクルする資源の有効化と、限りなく廃棄ゼロを目指す資源循環活動を推進してきました。同製品群における2018年度の使用済み商品再資源化率は、主要海外拠点*2 で廃棄ゼロ基準である99.5%以上、国内では99.9%を達成しています。一方、部品リユースによる新規資源の投入抑制量は2,967トンになり、2017年度より76トン減少しました。これは、生産台数が同じであっても、小型軽量化(リデュース)によりリユース部品の活用重量が減少傾向にあるためです。富士フイルムグループは、今後も3Rトータルで資源投入量の抑制に努めます。
富士フイルム 神奈川事業場では、従来、構内河川などに設置してある監視計器が夜間に水質変動を検出した際、緊急呼び出しにより現場到着後に確認と対応を行っていました。
この初動を少しでも早めるため、関連データをICTで管理する仕組みに改良しました。
富士フイルム 富士宮事業場では、ボイラーの燃焼状態や煙突からの煤煙排出状況を確認できる監視カメラを設置し、離れた場所にある中央制御室から、24時間監視できるようにしました。
タッチパネル用薄型両面センサーフィルム「EXCLEAR」。この導電性フィルム製造時に発生する廃液は、従来自家処理が難しく、外部に処理を委託してきました。
富士フイルム 神奈川事業場 足柄サイトでは、廃水の組成に合った活性汚泥の馴養*3を行うことで、廃水の全量自家処理を実現。これにより、事業場の全廃棄物排出量における約25%相当(対前年比)を削減しました。
デジタルカラー複合機「DocuCentre-VII C3372」が、2020年に中国工業情報化部の「グリーンデザイン製品」に認定されました。中国進出企業の複合機として初めての認定です。また、本製品を製造するFUJIFILM Manufacturing Shenzhen Corp.は、2019年に「グリーン工場」に認定されています。
中国工業情報化部は、国家政策「中国製造2025」のもと「グリーン製造」を推進し、「グリーンデザイン製品」や「グリーン工場」の認定を行っています。「グリーンデザイン製品」では、商品の設計・開発から製造、輸送、使用・維持、リサイクルまで、製品のライフサイクル全体が環境に与える影響が評価されます。
今回、本製品のリサイクルしやすい設計、省エネルギー性能、静音性などが高く評価されました。
オランダのチルバーグにあるFUJIFILM Manufacturing Europe B.V.の工場では、2016年に敷地内に建設した大規模廃水処理施設を近隣企業3社と共同利用しています。
この施設ではオランダでは珍しい「膜分離活性汚泥法(Membrane Bio Reactor)」方式を採用しており、1日1,000万リットルの水を処理できます。4社からの廃水を安全かつ効率的な方法で浄化し、地域の廃水処理場の負荷軽減に貢献しています。
将来的には、浄化された水を自然や農業に還元できる形で利用することを目指しています。