CSR活動報告│環境

【重点課題3】生物多様性の保全

富士フイルムグループは創業以来、すべての事業活動が自然環境から恩恵を受け、また自然環境に影響を与えていることを認識し、環境や生物多様性の保全を重視しています。事業活動を通じサステナブル社会の実現に貢献していく上で、ネイチャーポジティブ(自然生態系の損失を食い止め、回復させること)を重要な社会課題の一つとしてとらえており、この考えの根拠となる方針を制定し、それに基づきさまざまな活動を推進しています。
当社は企業・金融機関が自身の経済活動による自然環境や生物多様性への影響を評価し、情報開示する枠組みを構築していくことを目指す国際イニシアチブである、TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures、自然関連財務情報開示タスクフォース)による提言に賛同しています。TNFD提言v1.0に基づき、LEAPアプローチ※を用いて実施した分析・評価結果については、TNFDレポートにてご覧ください。
生物多様性は、気候変動に比べて、地域性がより強く影響するテーマであるため、今後も国際的視野を持ちつつも、各地の社会的要請を踏まえて、ステークホルダーとのコミュニケーションを図っていきます。

TNFDレポート

PDF:1.28MB

  • * LEAPアプローチ:TNFDの推奨する自然関連課題の評価のための統合的なアプローチ。予備的評価であるScoping、および、Locate(発見)、Evaluate(診断)、Assess(評価)、Prepare(準備)の4ステップの分析から構成され、自然との接点を把握し、自然関連の依存・インパクト・リスク・機会を特定し、対策内容や指標・目標などの情報開示を促す。
取り組みの概要

当社グループでは生物多様性に関係するリスク・機会に則して「事業拠点」「製品」「地域社会」の視点でさまざまな活動を行っています。

生物多様性保全に関する当社の主な取り組み
生物多様性に関するリスク・機会に即して、事業拠点、製品、地域社会の視点で様々な活動を行っている
事業拠点における生物多様性への配慮

1.影響の最小化

当社事業場の多くは化学物質を使用していますが、化学物質はすべて何らかの危険有害性を有しています。大気汚染・水質汚濁・土壌汚染などのいわゆる環境負荷を発生させてしまうと、事業場周辺のみならず地域・流域の生物多様性が劣化し、場合によっては回復に長い時間が必要となることがあります。そのようなことが発生しないよう、関連する法令を遵守するに留まらず、自主管理値を定め、より高いレベルでの事業場管理を行っています。

2.地域の環境保全

具体的な取り組みについては、「活動トピックス」を参照ください

製品における生物多様性への配慮

富士フイルムグループは、生物多様性に悪影響を与えないよう環境に配慮した製品づくりを行っています。

1.植物由来原材料の調達の取り組み

2021年度に制定した富士フイルムグループ「植物由来原材料の調達に関する管理規則」に則り、環境・人権に配慮・管理された森林資源などからのパルプやパーム油などの原材料を調達し、自然破壊や人権侵害に加担しないことの管理を徹底しています。
ビジネスイノベーション分野では、調達する用紙自体に対する基準に加え、原材料の調達先に関する選定基準を定めており、原材料の調達先には事業活動を通じて生物多様性保全や地域住民の権利尊重などに取り組むことを求めています。
また、既存調達先の遵守状況の確認および新規調達先の選定をするために、調達担当役員を議長とする「ESG用紙調達委員会」を毎年1回開催しています。

2.環境配慮設計

製品開発時の環境配慮設計に「生物多様性保全」の視点を組み入れ、すべての製品化過程で生物多様性評価を行っています。
評価の要点として、1.生態系への影響回避または最小化に向けた製造段階での環境負荷低減、2.生物資源の調達地域での生育・生息地の損失・減少・分断化などの調査、3.生物資源の持続的供給性の3点について問題ないことを確認し、より環境価値の高い製品・サービスの持続的な提供に努めています。

地域社会における生物多様性への配慮

NPO法人などと連携した環境啓発活動により、若い世代の環境意識向上を図っています。

生物多様性視点での水資源

気候変動が大気中の温室効果ガス濃度に依存する地球規模の環境課題であることに対し、生態系における課題には大気・水・土壌・鉱物の要因が大きく関わっており、生物多様性は地域性の高い環境課題です。当社事業場の操業には水が不可欠なことから、水と事業との関連性に重点を置き活動を推進しています。
富士フイルムグループは、創業の事業である映画用フィルムや写真フィルムの製造において、清浄な水を多く使用していたことから、早くから水投入量の削減、水のリサイクル利用に取り組んできました。近年、国際的な重要課題として水リスクに関心が高まっていることも鑑み、さらなる水資源の削減・効率的な使用を進めています。

水資源の有効活用

富士フイルムグループは、創業の事業である映画用フィルムや写真フィルムの製造において、清浄な水を多く使用していたことから、早くから水投入量の削減、水のリサイクル利用に取り組んできました。近年、国際的な重要課題として水リスクに関心が高まっていることも鑑み、さらなる水資源の削減・効率的な使用を進めています。

水の目標と進捗

  • 長期目標:「2030年度までに当社グループによる水投入量を30%削減(2013年度比)」
  • 中期目標:「2025年度までに当社グループによる水投入量を20%削減(2013年度比)」
  • 短期目標:「2023年度末までに当社グループによる水投入量を18%削減(2013年度比)」
  • 進捗:2023年度末時点で11%削減(2013年度比)
水リスクへの対応

水リスクにおいては、問題を抱える地域が世界的にさらに拡大する懸念も指摘されているため、2014年より、水の需給がひっ迫するリスクがある「水ストレス地域」状況と「取水量を踏まえた事業影響度」の2指標マトリックスを使った「水リスク評価」を開始し、富士フイルムグループの全事業拠点においてリスク評価を継続して実施しています。2024年からは、「水ストレス地域」の評価にAqueductの「Baseline water stress」を用いて、2指標マトリックスでスクリーニング評価を行っています。その評価結果を基に、優先度をつけて順次、各拠点の水リスクの有無を確認していきます。

事業における水リスクの評価
流域環境リスクと自社の事業の影響度の2軸で、当社グループの事業拠点のリスク確認優先度を確認

水資源がおよぼす自社ビジネスへの影響評価

活動トピックス 各拠点における取り組み
ディスプレイ用光学フィルムの製造拠点における水資源保全の取り組み

(富士フイルムマテリアルマニュファクチャリング第8製造本部/熊本)

ディスプレイ用光学フィルムの製造を行う、富士フイルムマテリアルマニュファクチャリング第8製造本部(熊本)の所在地である熊本県菊陽町を含む熊本地域(熊本市とその周辺市町村)と呼ばれる地域には豊富な水資源があり、本地域では生活用水のほとんどを地下水で賄っています。同事業場ではこの地下水を守る活動として地下水かん養林の植林・整備や、かん養田の保全の活動を進めており、従業員やその家族が植林活動や田植え、稲刈りに参加しています。

地下水かん養田での田植えの活動

各事業会社の活動
生物多様性の保全 (富士フイルム)
生物多様性保全(持続可能な用紙調達)(富士フイルムビジネスイノベーション)