世界的な化学物質の安全性点検に伴い、法令で新たに使用が制限される化学物質が増えています。当社はこれまで、法令で指定された化学物質について、課される要求事項より厳しい管理を行ってきました。この先行管理をさらに進め、化学物質が法令の対象となる前であっても、当社がリスクを認めた場合は、優先リスク管理物質として代替化や使用量削減を進めています。
富士フイルムグループでは、動物福祉の観点から化学物質の安全性評価において動物実験の代替化に取り組んでいます。富士フイルムが開発した皮膚感作性試験代替法「ADRA」は、OECD(経済協力開発機構)テストガイドラインに収載され、同法用の試験試薬を富士フイルム和光純薬が提供し、その普及を図っています。
機能性分子や機能性ポリマーの分子設計力とそのエンジニアリング技術は、当社のコア技術です。当社はこれらの新規素材の開発によって、新たな価値を社会へ提供しています。また、資源の利用効率や品質を高める製造プロセスの革新にも注力しています。
製品中の化学物質の情報や化学物質の安全な取り扱い方法がサプライチェーンで共有されることは、適正な化学物質管理の要件です。富士フイルムグループは、サプライチェーンの上流、中流、下流のそれぞれに位置する事業を有することから、化学物質管理に関わる当社のさまざまな知見の普及を通じて、サプライチェーンでの適正な化学物質管理への貢献を目指しています。
2024年の労働安全衛生法の改正に伴い、リスクアセスメントの実施が義務付けられている対象物質の製造、取り扱いなどを行う事業場においては「化学物質管理者」の選任が必須となりました。それに伴い、2023年10月より富士フイルムグループでは対象となる国内の15事業場すべてにおいて、「化学物質管理者」の選任要件として必要な専門的講習(講義および実習)を実施し、約400名が受講しました。講習においては、実際に過去グループ内で発生した労働災害やリスク案件の例と、それらへの対策についての説明を加えるなどの工夫を行いました。

富士フイルム足柄事業場で行われた、化学物質管理者専門的講習の様子。
当社グループで開発した水溶性アゾ重合開始剤は、有機溶剤ではなく水に溶けやすい性質を持ちます。そのため、一般的な油溶性の重合開始剤と比較した場合に製造工程全体で使用する有機溶剤の削減が可能となり、有機溶剤利用時・廃棄時に発生するVOCの削減に貢献します。