― バイオ医薬品の開発・製造受託を持続可能な形で拡大
富士フイルムグループは、バイオ医薬品の開発・製造受託(CDMO*1)事業を拡大しています。その中核を担うFUJIFILM Diosynth Biotechnologies( FDB)は、米国、英国、デンマークに計4拠点を有し、高度な生産・品質管理技術と最新設備により多様な顧客ニーズにこたえています。今後さらなる市場成長が見込まれることから、2021年3月、米国ノースカロライナ州拠点の第2サイトとして、バイオ医薬品の大型製造サイトを新設することを発表しました。本サイトでは、2万リットル動物細胞培養タンク8基、大型の製剤製造ライン、多様な製品に対応する包装ラインを導入し、原薬製造から製剤・包装までワンサイト・ワンストップでの受託が可能となります。
本サイトの地域選定にあたっては、自社が関わる工程に留まらず、ライフサイクルアセスメントに基づいたサプライチェーントータルでの環境負荷を考慮。最大の需要地である米国向けの供給を想定し、原薬・製剤・包装および輸送に伴うCO2排出量を複数のモデルケースで試算しました。その結果、欧州製造拠点を介したモデルではいずれも空輸に伴うCO2排出量が甚大であり、米国内で全工程を完了するモデルが最も環境負荷が少ないことがわかりました。また本サイトでは、太陽光発電などの再生可能エネルギーの利用をはじめ、環境プログラムの推進が活発に行われているノースカロライナ州の利点を生かし、地元政府・企業と連携して環境負荷低減の仕組みを積極的に導入します。使用電力のすべてを再生可能エネルギー由来の電力で賄うことを目指し、今後も環境配慮を前提とした製造拡大、事業成長を加速させていきます。
「Green Value Products」認定制度の運用
富士フイルムグループは、持続可能な社会の実現に向け、環境配慮に優れた製品・サービスを創出し続ける仕組みとして、富士フイルムグループ「Green Value Products」認定制度を運用しています。2021年度は、新たに38製品を認定し、認定製品は累計203製品となりました。また、2030年までの環境目標に「『Green Value Products』認定製品の割合を全社売り上げの6割にする」という新たな目標を設定し、さらなる製品・サービスによる環境負荷低減にチャレンジしていきます。
昨今、膨大な量のデータ保管に要するエネルギーが社会課題になっています。データセンターなどで使用されているHDDは、アクセスの有無にかかわらず、常時ディスクを回転させるため電力を必要とします。大容量磁気テープを用いた富士フイルムのデータアーカイブソリューション「dternity」では、HDDに保管されたデータの8割以上を占めるといわれるアクセス頻度の低いデータを、データの読み書き時にのみ電力を必要とするLTOテープ(磁気テープ)に保管。これにより、HDDに保管した場合と比べ、消費電力を約74%減と大幅に削減します。デジタルデータ量が増加し続ける中、データセンターのエネルギー削減に貢献できる点を評価し、ゴールドに認定しました。
運用条件: 毎日約110GBのデータを書き込み、24時間通電状態で、データ書き込み時とそれ以外の時間により算出
TAAデータ: HDD容量10TB+テープ容量240TB(LTO7×40巻)の当社実測値
HDDデータ: [出所]JEITAデータストレージ専門委員会「テープストレージの活用による省エネ貢献2016」
2020年以降、コロナ禍によりテレワークが急速に普及し、働き方も変化しています。一方、セキュリティリスクの懸念により、導入が進まない企業も多く存在します。富士フイルムビジネスイノベーションのテレワークソリューション「beat」は、安心・簡単・便利なネットワーク管理を包括的に支援するサービスです。
強固なセキュリティシステム(安心)、24時間監視のワンストップでのネットワーク運用(簡単)、オフィス内外のネットワークを安全につなげる柔軟性(便利)で、快適で安全なネットワーク環境を実現します。
こうしたネットワーク管理の負荷軽減によりテレワーク導入を容易にし、人の移動やオフィス設備利用を減らすことで、CO2排出削減に貢献できる点を評価し、ゴールドに認定しました。
富士フイルムグループは、液晶ディスプレイ用と有機ELディスプレイ用の偏光板(特定方向の光のみをとおすフィルター)に不可欠な偏光板保護フィルム「トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(製品名:フジタック)」を開発・製造・販売しています。優れた光学特性や平滑性、高い透明性を有し、高機能フィルムの支持体としても使用されています。
本フィルムは、非可食性植物から作られるセルロースを原料としており、廃棄時のCO2排出量の約50%が植物由来(バイオマス)として控除されます。そのため、石油由来のPET*2、COP*3、アクリルなどのフィルムと比較し、製品廃却時のCO2排出量が少ないことが特長で、現在環境的観点からも関心を集めています。TACフィルム製品の提供をさらに拡大していくことで、社会におけるCO2排出量の削減に貢献していきます。
富士フイルムは2006年、TACフィルムについて(株)日本有機資源協会からバイオマス製品の認定を受けています
廃棄物処理によるCO2 排出量
天然ガスは石油や石炭などのほかの化石燃料と比べ最もCO2排出量が少なく、脱炭素社会実現までの移行期間において、CO2排出抑制に貢献できるエネルギー資源と考えられています。
富士フイルムグループは、高度な精密塗布、化学構造設計技術を生かした膜形成技術により、この天然ガスからCO2等の不純物を分離する「CO2分離膜」を開発・提供しています。この膜形成技術を応用し、さまざまな特色を持たせた分離膜を開発することで、将来的には水素などCO2を排出しないエネルギー資源の精製・製造にも活用することが可能になると考えており、引き続きエネルギー領域における脱炭素化の実現に向け取り組んでいきます。
富士フイルムグループは、私たちの事業のみならず、ステークホルダーとのコミュニケーションをとおして、脱炭素社会の実現を目指しています。
富士フイルムグループは、以下のイニシアチブの設立趣旨に賛同し、加盟・活動を支援しています。
2009年に発足した、持続可能な脱炭素社会の実現を目指す日本独自の企業グループ。当社は2018年5月に加盟。
- 2020年7月、「富士フイルムグループの再生可能エネルギー調達」とのテーマで同団体主催セミナーにて講演。当社の再生可能エネルギー導入事例のほか、電力および燃料の脱炭素化に向けた当社戦略を紹介。
2018年7月に、気候変動対策に積極的に取り組む企業や自治体、団体、NGOなどの情報発信や意見交換を強化するため、ゆるやかなネットワークとして設立。当社は2018年より参加。
- 2020年6月、JCIメンバーの一員として、コロナ禍での「グリーン・リカバリー」に向けた環境大臣との意見交換会に参加。化学系事業において重要となる燃料の脱炭素化に向けた技術開発やインフラ整備への支援の必要性を訴求。
- 2021年1月、メンバー企業93社の一員として、本年策定される次期エネルギー基本計画で、2030年度の再生可能エネルギー電力目標を40~50%とすることを求めるメッセージを公表。
- 2021年4月、気候危機の回避に向け、日本の削減目標をその当時の26%から、50%、55%という削減をめざす欧米に匹敵する、先進国としての役割と責任にふさわしい意欲的なレベルにまで強化することを求める書簡を提出。また同メッセージに関する記者会見にて、当社の気候変動に対する取り組みを紹介するとともにJCIメッセージに賛同する意思を表明。
企業などに対し、気候変動関連リスク、および機会に関する財務情報について開示することを推奨している組織。当社は2018年12月にTCFD提言に賛同することを表明。
- 2019年、環境省TCFD支援事業への参画
- 2019年、TCFDコンソーシアムへ入会
- サステナビリティレポート2019よりTCFD提言に基づく分析・情報開示を開始
企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアチブ。当社は2019年より加盟。
化学系事業においては、蒸気による高温の熱利用が欠かせず、現状の技術ではこの部分の再生可能エネルギー化のハードルが非常に高い。当社では現状、高温の熱利用に伴うCO2排出が製造工程における使用エネルギー由来のCO2排出のうち約50%を占めており、電力のみならず燃料の脱炭素化に向け、社会での取り組みを活発化し、さらなる技術革新を促進する必要性を認識している。そのため、当社は2019年、自社の再生可能エネルギー導入目標に加え、水素などCO2排出のない燃料への転換・導入を組み合わせた2050年CO2排出ゼロを掲げ、同イニシアチブへ加盟。また2021年には再生可能エネルギー導入目標のゴールを10年前倒しし、「2040年度までに100%の再生可能エネルギーへの転換」を目指すと宣言している。化学系事業における再生可能エネルギー化の障壁打破に向け、他社との連携などあらゆる模索を続けていく。
- 2019年6月、JCLPシンポジウムにおいて、RE100に参加する日本企業らが集まる「RE100メンバー会」での検討のもと、「再エネ100%を目指す需要家からの提言」を公表
- 2020年、同団体およびGWEC/CDP共催セミナー"Corporate Sourcing of Renewable Energy" シリーズの一環として、富士フイルムグループの再生可能エネルギー調達の事例を講演
- 2021年3月、RE100企業53社がJCLPとの連携の下、日本政府に向けて、再エネの導入拡大を求める書簡を送付
WWF、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトによる共同イニシアチブ。企業に対し、気候変動による世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べ、1.5度に抑えるという目標に向けて、科学的知見と整合した削減目標を設定することを推奨。
- 2017年、削減目標設定表明に対し、SBTiから2℃目標認定を取得
- 2020年、従来目標の引き上げに対し、SBTiからWell-below 2℃目標認定を取得
- 2023年、従来目標の引き上げに対し、SBTiから1.5℃目標認定を取得
日本における水素インフラ整備および社会実装に向けて、社会実装プロジェクトの創設や、需要創出、規制緩和への政策提言などを行う組織として、2020年に設立。富士フイルム(株)は2022年より加盟。
富士フイルムグループは、主に加盟する業界団体や、気候変動に関するイニシアチブを通じて、政策への要望や賛同を発信しています。
(1)2019年、環境省支援事業「TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業」への参画
(2)2020年、環境省による脱炭素社会実現に向けた広報活動「ひろがるカーボンニュートラル~トップが語る脱炭素」プロジェクトに参画。富士フイルムグループの気候変動に向けた取り組みとして、FUJIFILM Manufacturing Europe B.V.オランダ工場の全使用エネルギーの風力発電エネルギーへの切り替え(2016年)や再生可能エネルギー導入目標の設定(2019年)を紹介。
(3)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクト「機能性化学品の連続精密生産プロセス技術の開発」および「二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発」に参画。「革新的環境イノベーション戦略」に紐付くプロジェクト参画企業を対象とする経済産業省ゼロエミ・チャレンジ企業リストに収載。
(4)経団連カーボンニュートラル行動計画(旧:経団連低炭素社会実行計画)
2050年カーボンニュートラルを目指す業界横断的な経済界の自主的取り組み。カーボンニュートラルのビジョン策定や排出削減の進捗について評価検証を行うことで各企業の取り組みを促す仕組み。当社は日本化学協会を通じてCO2排出量削減の進捗や省エネ施策などの年度調査に協力。
- 1990年代から生産プロセスでのエネルギー効率利用の追求や、2000年代からの天然ガスなど炭素排出の少ない燃料への転換により、CO2排出量の削減を推進。
- 一般に製造業においては排出原単位目標を設定し、製造効率の最適化を目指す動きが多いなか、当社は、基準年からの排出絶対量目標を設定し、事業規模の拡大と排出総量抑制の両立に向けて取り組みを推進。
- GXリーグへの参画
自らのサプライチェーンや、生活者、教育機関、NGOなどの市民社会の幅広い主体と協働し、経済社会システム全体の変革(GX:グリーントランスフォーメーション)を牽引する企業を後押しするための枠組み。当社は2022年2月に経済産業省が発表したGXリーグ基本構想に賛同、2023年度よりGXリーグに参画。
富士フイルム富山化学 富山第一工場では、ボイラー燃料を重油から都市ガスに転換し、年間約1,052トンのCO2排出削減を達成しました。富士フイルムグループでは2003年以降、自家発電設備やボイラー燃料について、重油から都市ガスへの転換を積極的に進めており、現在使用している燃料の約90%は、CO2排出量の少ない天然ガス由来となっています。
富士フイルムオプティクスでは、4つの事業場が連携し全社一体で省エネ活動を進めることで、製造現場での省エネ施策を積み上げ、CO2排出量を対前年で2,300トン削減しました。
代表的な取り組みとして、栃木県の佐野事業場第4製造部では、主要設備を機能別に分類し稼働状況を分析。無駄な消費がないかなど、使用電力の見える化を行いました。
その結果をもとに、消費電力が全体の約45%を占めるクリーンルームの空調設備を中心に運用条件を見直し、生産エリア別に空調の設定温度や稼働時間を最適化することで、部門全体の消費電力を対前年で16%削減することができました。
富士フイルム神奈川事業場では、事業場内の製造工程で使用する冷熱源を中央冷水方式で供給しています。
2020年度は、事業場全体での冷凍機のさらなる集約化を進め、インバータ制御による低温冷却水を有効活用した高効率ターボ冷凍機も導入することで電力を削減。
年間240トンのCO2排出削減を達成しました。