人口10万人当たりの罹患者数が200人に迫るなど、世界的にも高い感染状況にあるベトナム社会主義共和国(以下、ベトナム)。富士フイルムグループでは、医療アクセスが困難な地域を中心に結核検診の機会を提供しています。
- 人口 : 約9,762万人
- 面積 : 32万9,241km2
- 首都 : ハノイ
ベトナムは、東南アジアの中でも結核罹患者が多い国であり、大きな社会課題となっています。
- 年間罹患者数 : 約17万2,000人
- 人口10万人当たりの罹患者数 : 176人
特に離島や山間部のような遠隔地は、首都ハノイやホーチミンといった都市部に比べて医療アクセスが不十分であり、結核検診の機会が十分に提供されず、潜在的な罹患者が多いとされています。
Stop TB Partnershipと連携して結核検診を実施するIRD VNとFriends for International Tuberculosis Relief(FIT)は、僻地における医療アクセスの課題を以前から認識し、結核検診を推進してきました。しかし、山や海に隔てられ、交通インフラが乏しい遠隔地に大型のX線撮影装置を持ち込み、大規模な結核検診を行うことは容易ではありませんでした。
そこで両団体は、日本政府の「草の根・人間の安全保障無償資金協力」に申請し、2020年に「遠隔地における結核のスクリーニングを効率的に実施するための携帯型X線装置供与事業」として採択されました。これに基づき、当社の現地法人FUJIFILM VIETNAM Co., Ltd.は、携帯型X線撮影装置とAI技術を用いて開発された診断支援ソフトウェアを導入。両団体は2022年2~4月に本装置を活用し、北部および中部3省の山間部や離島の村落などの住民約1万1,000人に対して結核検診を行い、その結果、陽性と診断された77人について、医療機関での治療につなげました。
当社装置は一人でも持ち運べるサイズ・重量のため、特に離島での検診時は小型船舶の定期便によるスムーズな搬入を実現しました。
President and Viet Nam Project Office Head
Vo Nguyen Quang Luanさん
FITは、ベトナムの人々が、結核に対して適切な予防とケアが受けられる環境を整えることを目標としています。人々がこうした環境を得るための障壁を克服できるように支援を行うことで、感染を防ぎ、命を守り、苦しみを軽減できるように努めています。FITがベトナムで行う積極的なスクリーニング検診は、富士フイルムとのパートナーシップで一層強化され、可能なかぎり多くの人々に検診の機会を提供することにつながっています。「私たちが生きる時代に結核のまん延を終らせる」という究極の目標に向けて、あらゆる状況において、FITと富士フイルムはともにすべての人々に質の高いケアとサービスを届けるために協力し合えると考えています。
Executive Director
Dzung Phamさん
IRD VNは、ベトナムの公衆衛生にかかる負荷、特に地域社会にかかる負荷をなくすことに取り組んでいます。私たちの目標は、いかなる状況下でも、検診や治療、予防サービスの拡大・改善を図ることです。新型コロナウイルスの感染拡大時には、富士フイルムとのパートナーシップに基づき、ワクチンの集団接種キャンペーンを利用し、携帯型X線撮影装置による結核スクリーニング検診を同時に実施しました。この革新的な戦略により、ソーシャルディスタンスが求められる時期においても、極めて多くの人々に検診の機会を提供することができました。今後も、富士フイルムをはじめとする貴重なパートナーとの連携を生かし、新たなサービス提供モデルの創出に努めていきます。