年間の新規罹患者数が57万人を超え、結核の高蔓延国に位置づけられているパキスタン・イスラム共和国(以下、パキスタン)。富士フイルムグループは、現地団体への支援を通じ、感染リスクの高い地域の結核検診率向上に貢献しています。
- 人口 : 2億2,090万人
- 面積 : 79.6万km2
- 首都 : イスラマバード
パキスタンは世界で5番目に年間の新規罹患者数が多く、感染拡大防止のための対策が急がれています。
- 年間罹患者数 : 約57万3,000人
- 人口10万人当たりの罹患者数 : 259人
特に交通インフラが乏しく、電力供給もない地域では、結核検診の機会が少なく、感染規模を把握するのが難しい状況です。
パキスタンの炭鉱労働者は、採掘現場における長年の「シリカ*1」の粉じんへの暴露と、過酷な労働環境により、結核への感染リスクが比較的高いといわれています。しかし、鉱山地帯は道路や電力が整備されておらず、医療アクセスも限られていることから、現地での検診の機会が十分ではないことが課題となっていました。
小さな土ぼこりや金属・鉱物の紛じんを長期にわたり大量に吸い込むと、肺が反応し、繊維増殖性変化などを主体とした「じん肺」に罹患するリスクが高まります。じん肺になると、肺の機能が低下するだけでなく、肺結核などのさまざまな疾病を合併することがあります。じん肺の罹患者は、そうでない人と比べて肺結核に罹患しやすく、またじん肺が進行すると肺結核も治療しにくくなるといわれています。
じん肺は、主に鉱山や工事現場、建設業などでの作業に関連して発症するケースが多いことから、「職業性肺疾患」の1つとして認識されており、肺結核との関連性も高いため、パキスタンの炭鉱労働者に結核罹患者が多い要因と考えられています。
長年にわたりパキスタンの結核問題に取り組んできたNPO法人DOPASI Foundationは、Stop TB Partnershipと連携。2019年4月に、当社の携帯型X線撮影装置を活用した結核検診プロジェクトを開始しました。
小型かつ軽量で持ち運びやすい携帯型X線撮影装置とAI技術を用いて開発された診断支援ソフトウェアを用いることで、鉱山地帯での大規模な結核検診を実現。2021年8月までの約2年半、炭鉱労働者の80%が住んでいるといわれる3地区117か所、延べ12,495名に対してX線による検診を実施し、結核と診断された424名が医療機関で治療を受けました。なお、携帯型X線撮影装置は内蔵式電源のため、電力インフラが整っていない鉱山地帯での円滑な撮影が可能となりました。
Director Programs
Kinz ul Emanさん
私たちDOPASI Foundationは、およそ30年にわたり、パキスタンの結核対策に携わっています。私はプログラムを推進するディレクターとして、世界中の多くの人々に貢献できる可能性を秘めた技術革新をリードする役割を担っています。DOPASI Foundationは、結核に対するスクリーニング検診を行うため、携帯型X線撮影装置とAI技術を活用した診断支援アプリケーションを世界に先駆けて用い、その経験を世界10カ国の23の支援団体と共有しています。
この革新的なアプローチを通じて、以前は検診を受けられなかった人にも検診の機会を提供できるようになり、医療サービスを等しく提供する役割を果たしていることに誇りを感じています。
また、パートナーである富士フイルムによる、結核のスクリーニング検診に貢献する、携帯型X線撮影装置の開発に関する優れた功績を讃えたいと思います。困難な状況にある人々に質の高い医療サービスを提供すべく支援を行う富士フイルムの献身的な活動には、心から感動を覚えています。
今後もDOPASI Foundationは、富士フイルムなどのパートナーと協力し、ヘルスケアのよりよい仕組みを築くために、さらなるイノベーションをもたらすことを切望しています。私たちは、「質の高い医療サービスをあらゆる人々が利用できる状況をもたらす」というミッションに引き続き取り組み、この分野における世界的な変革の一端を担えることを楽しみにしています。