コンプライアンス&リスクマネジメント

コンプライアンスとリスクマネジメントの基本的な考え方

富士フイルムグループでは、従業員のコンプライアンス意識を維持・向上させるために以下の4つのステップでSTPD(See-Think-Plan-Do)を回す仕組みを取り入れています。社会の変化のスピードが速まり、事業を進める上でこれまでの経験や、蓄積した知の活用だけでは通用しない業務が増えています。そこで富士フイルムグループでは、新たな視点をより取り込みやすくするため、従来のPDCAの考え方を進化させ、STPDとして独自に定義しました。

Seeでは社会情勢や通報内容などから社内外の状況を把握/Thinkでは情報分析の上、強化すべきポイントを検討/Planでは施策の効果を確認するための意識調査などを計画/Doでは全役員・従業員による企業行動憲章・行動規範への遵守宣言などを実施
コンプライアンスとリスクマネジメント推進
推進体制

富士フイルムグループでは、富士フイルムホールディングス社長を委員長、ESG管掌役員を副委員長とするESG委員会を設置し、リスクマネジメントおよびESGに関する活動について重要事項の審議および決定を行っています。
ESG委員会の活動は定期的に取締役会に報告され、取締役会により、グループ全体のリスクマネジメント活動の有効性を担保しています。さらに、監査役会にて内部統制の仕組みが適切に機能しているかを監査しています。
富士フイルムグループの各事業会社においては、各社にコンプライアンスとリスクマネジメントの責任者を配置し、各社の事業活動におけるリスクマネジメントの推進と、グループとして大事にしている精神、“オープン、フェア、クリア”な企業風土をグループ全体に定着させるため、さまざまな施策を実施しています。

富士フイルムグループ コンプライアンス&リスクマネジメント体制図
富士フイルムホールディングスと各グループ会社における、コンプライアンス&リスクマネジメントの体制を現した図
コンプライアンス推進方針

企業活動の基本ポリシーとして「富士フイルムグループ 企業行動憲章・行動規範」を制定し、法令や社会倫理に則った活動の徹底を図るとともに、コンプライアンス宣言を通じて、事業活動においてコンプライアンスを優先することを富士フイルムグループ全従業員に周知徹底しています。

  • 企業行動憲章
    富士フイルムグループが共通して大切にしたい企業精神や原則をまとめ、会社および従業員が遵守・実践することを宣言したもの。
  • 行動規範
    富士フイルムグループが事業活動を展開するにあたり、従業員が日々の業務において取るべき行動をまとめたもの。
リスクマネジメント推進方針

富士フイルムグループは、グループ全体のリスクマネジメントの基本方針およびリスクマネジメント体制を定めた「リスクマネジメント規程」に基づき、事業を取り巻くさまざまなリスクに対し、未然防止のための課題抽出とクライシス事案発生時の適切な対応を実施しています。

重点リスクの決定プロセス

富士フイルムグループでは、経営に大きな影響を及ぼしうるリスクとして、64のリスク項目を抽出し、「戦略リスク」「財務・税務リスク」「オペレーショナルリスク」「自然災害・感染症」「気候変動リスク」の5つの分野に整理しています。全リスク項目を影響・被害の大きさ×発生可能性による定量評価に加え、人権および経済安全保障の観点も加味して評価し、優先的に対応すべき「重点リスク」と当該リスクへの対応策をESG委員会にて決定しています。また、ESG委員会にて決定された重点リスクおよび当該リスクへの対応状況については、半年に一度、取締役会に報告しています。

重点リスクの決定プロセスとして、当社グループに影響を与えうるリスクを抽出し、定量的にリスクを評価します。ESG委員会にて重点リスクと対応を決定し、取締役会への報告とリスク対応の推進が行われる、というサイクルになっています。
2024年度全社リスクマップ(一部抜粋)
2024年度全社リスクマップ(一部抜粋)
2024年度の重点リスク

以下は、当社が「グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性がある」と認識している主なリスク項目です。
有価証券報告書の「事業等のリスク」ページでは、以下の項目に加え、「事業機会の損失など経済的リスク」についても記載しています。

リスク項目 対応状況
情報セキュリティ(サイバー攻撃・機密情報漏洩・個人情報漏洩) PC・サーバなどの挙動を監視するセンサー導入およびグローバルでのセキュリティ監視センターの構築を完了、サイバー攻撃への耐性強化を推進中。
原料・資材の高騰・欠品 重点事業・製品の原料・資材において、複数地域からの調達化を進めている。
地政学リスク 当社グループの生産・開発・営業拠点および調達先は世界各国に分布する。最新の情報を収集し、リスクマネジメント体制の中で従業員の安全確保、資産の保全、経済活動の指示を決定し、速やかに発信し、被害の最小化にあたる。
大規模自然災害
(富士山噴火含む)
事業場・サプライチェーンのリスク評価・監視・BCP策定。
BCPは早期復旧や被害リスク低減に向けた活動を強化している。
気候変動リスク 製品ライフサイクルでのCO2排出削減、環境負荷の低い生産活動の推進、インターナルカーボンプライシング制度により、低炭素投資を推進。
化学物質規制などの強化 規制強化により、既存の原材料が使用不可になることが生じうる。PFAS規制を重点課題としてとらえ、代替素材の開発・代替化などにより影響を最小化する。
腐敗行為・贈収賄 ヘルスケア事業などは法的規制・許認可が厳しく、腐敗行為のリスクが高い。従業員教育と外部ベンダーを用いた中間業者のモニタリングを中心とした対策を強化している。
感染症パンデミック 感染症拡大による事業影響を避けるべく、組織ごとのBCPを策定し、社内感染防止策を徹底している。
火災・事故 化学物質の取り扱い、設備安全に関わる知見・技術も活用し、防火・防爆の対策を実施している。また生産設備の火災リスクアセスメントを実施した。
製造物責任・製品瑕疵 ヘルスケア事業においては、製品品質の不具合が、お客さまの健康被害につながるリスクがある。そのため品質保証に関する監査を強化している。
役員・従業員の不正 適切に内部統制を整備・運用することで、不正を抑制していく。またモニタリング活動によって早期発見・抑止を実現する。
AI利活用に伴うリスク AIの利活用遅れによる競争力の低下、AI判断結果による差別や偏見の発生、規制対応への遅れなどを主要なリスクととらえ、従業員教育や仕組みの整備を進める。
資源循環規則 欧州ESPR(Ecodesign for Sustainable Products Regulation)による規制強化を見据え、エコデザイン要件を満たす製品への移行を推進する。
物流リスク 物流事故に加え、輸送能力不足、国際輸送ルートが地政学的な影響を受けるリスクがある。輸送能力の確保のため、適正な値上げ、モーダルシフトなどを進める。また、気候変動や地政学リスクを考慮した輸送ルートの構築を進める。
サプライチェーンCSRリスク サプライチェーン上のCSRリスク(人権侵害、労働安全衛生問題、紛争鉱物、現在奴隷法や強制労働防止法等の違反)は供給寸断およびレピュテーションリスクにつながる。行動規範周知や自己評価アンケート、訪問診断を通じてリスク低減活動を推進する。
クライシス発生時の報告と対応

グループ各社で発生したクライシス案件に対しては、コンプライアンス&リスクマネジメント推進体制のもと、リスクマネジメント規程に基づき、各事業会社、および富士フイルムホールディングスESG推進部に報告されるとともに、発生したリスクが拡大しないよう迅速に対応されています。重大案件につながる可能性がある案件については、即時にESG委員会へ報告され、対応方針について審議・決定されます。

各事業会社は当該グループ会社における再発防止策の実行を監督するとともに、ほかのグループ会社に事案を共有し、予防策を講じることにより、再発防止を徹底しています。

事務局となる富士フイルムホールディングスのESG推進部は、各事業会社経由で報告された案件をESG委員会に報告するとともに、当該情報などをもとにグループ全体としてリスクマネジメントの強化、推進を図っています。ESG委員会へは、案件の概要だけでなく、重要案件については詳細な内容も含めて報告されており、ESG推進部がそれらの情報を取締役・監査役へ四半期ごとに報告することで、グループとしてリスクマネジメントの実効性を担保しています。

コンプライアンスとリスクマネジメントの歩み

1997年からグループ各社における基盤の整備・強化を開始し、ホールディングス制移行後の2006年からは富士フイルムグループ一丸となって海外も含めた活動を強化してきました。

2023年度のトピック
従業員意識の啓発とモニタリング
  • 「富士フイルムグループ 企業行動憲章・行動規範」の教育を全役員・従業員を対象にグローバルで実施し、遵守宣言を取得
  • ヘルスケアに特化した法規制に関する教育を国内のヘルスケア事業従事者に対して実施
  • 各国の法令などに対応した腐敗防止教育をグローバルで実施
  • 情報セキュリティ事故や個人情報の取り扱いに関する事故・違反の防止のための教育および不審メール訓練を国内全役員・従業員を対象に実施
  • 情報セキュリティの職責を担う担当役員・部門長が参加するサイバーインシデント初動対応演習を実施
  • 国内各組織のリスクマネージャーを対象に、リスクマネージャーの役割および全社の重点リスクに関する説明会を実施
  • 「富士フイルムグループ 従業員エンゲージメントサーベイ」を、全役員・従業員を対象にグローバルで実施。
憲章・規範・規程の整備
  • グループパーパス制定に伴い、「富士フイルムグループ 企業行動憲章・行動規範」のトップコミットメントを更新
  • 「富士フイルムグループ グローバルヘルスケア行動規範」を一部改訂
  • 富士フイルムビジネスイノベーションおよび関係会社の「腐敗行為の防止に関する規程」を改正
コンプライアンスとリスクマネジメントに関わる計画と活動