重点課題(マテリアリティ)については、下記の図のようなステップを踏まえて、自社と社会の両面で影響の大きい社会課題を抽出し、SVP2030の重点課題として特定しています。【STEP3】の重要性評価では、「事業を通じた社会課題の解決」(環境・社会への貢献)と「事業プロセスにおける環境・社会への配慮」(環境・社会への負荷最小化)の両面から課題を導き出しました。また社会の関心・要望については、社会の声の代表としてCSR有識者の(株)イースクエアに評価いただいた上で、優先する課題の項目を洗い出しています。さらに、グローバルでの喫緊の課題である「環境」分野については、SDGsコンパスを参考に、環境・社会負荷(リスク)と機会(オポチュニティ)をマッピングし、課題を整理しています。
- 長期目標(2030年)の設定
- 地球規模の環境課題は数値目標を明示して取り組む
- 「事業を通じた社会課題の解決」(環境・社会への貢献)と「事業プロセスにおける環境・社会への配慮」(環境・社会への負荷最小化)の両面を考慮した重点分野に取り組む
今後も中期経営計画を立案する3年ごとに見直しを図り、PDCAサイクルを回しながら、SVP2030の達成、さらにはサステナブル社会の実現に貢献する企業を目指して、全社一丸となって活動していきます。
富士フイルムホールディングスにおける中期CSR計画は、持ち株会社制になった翌年の2007年、ガバナンスやコンプライアンスを徹底することから始まり、2017年には2030年を目指した長期目標「Sustainable Value Plan 2030(SVP2030)」の発表に至りました。
マテリアリティ策定の最初のプロセスは、CSRに関する社会動向、富士フイルムグループの理念体系・各種方針に関する活動状況、事業の動向などを踏まえた、今後のCSR活動の基本方針の決定です。
現在のCSR計画「SVP2030」では、「社会課題解決に向け、グローバル企業として貢献できることを長期視点でとらえ、目指す姿を明示する」こととしました。前身のCSR計画「SVP2016」の「社会課題の解決を事業成長の機会ととらえ全社で取り組む」という事業成長と社会課題解決の関係性の表明から、CSR計画「SVP2030」を全社の目指す姿とし、そして中期経営計画を実行計画と位置づけたことと、社会課題を中心として進化する企業の在り方を示したことが変化点です。原則、目標年度の2030年まではこの基本方針を変更しませんが、その修正の必要性についての検討は期中見直しの際に行います。
基本方針の下、世の中に存在するさまざまな社会課題の中から、現在ならびに将来にわたり、富士フイルムグループの事業に関連する社会課題を抽出しています。
世界共通の社会課題として、ISO26000などのグローバルなスタンダード、GRIなどのガイドライン、パリ協定の目標やSDGs、業界特有の社会課題などグローバルな社会課題をリストアップしています。さらに、株主説明会、投資家面談、環境対話集会などステークホルダーコミュニケ―ションから得られた情報や、すべての事業部が保有、開発している製品、技術、サービスが解決に貢献する可能性のある社会課題を検討し、それらを「関連する社会課題」としてリストアップします。加えて、富士フイルムグループが将来的に関連する、もしくは関連する可能性がある事業領域に関して、社会や環境の変化、規制・政策動向、またステークホルダーからの要請事項なども考慮して、当社事業に関連する社会課題を検討していきます。SVP2030立案の時は約300項目となりました。
抽出した社会課題は、自社への社会的要請や自社事業に関わる度合いの検討を通じて、自社の事業に影響の大きな社会課題を見極めて重点課題とするために、重要性評価を行います。この重要性評価は次の2つの視点で行いました。「事業活動によって生じる社会・環境への負荷の軽減/配慮」(負荷(リスク)対応に重きを置いた視点)と、「事業を通じた社会課題の解決」(機会(オポチュニティ)創出に重きを置いた視点)です。
【STEP2】で抽出した社会課題に対して、「自社にとっての重要性」は当社が評価し、「社会の関心・要望」は社会の声の代表として長年社会課題に取り組んでいるCSRコンサルティングの専門会社である(株)イースクエアに評価いただいた上で、両方の視点で重要な社会課題(以下のマトリックスの右上部分)を中心に重点課題を検討しました。
事業部の現在および将来の技術、製品、サービスを通じて、当社がインパクトを与えられそうな社会課題を洗い出しました。具体的には、以下のようなマトリックスの表に落とし込み、当社の事業と社会の双方にとって影響の大きい(●の数が多い)課題、そして当社事業の機会となる可能性の高い課題を重点課題としました。
【STEP3】で抽出された重点課題については、推進する事業会社の関連事業部とともに、全社の中長期のリスク・機会(統合報告書2022「中長期のリスク・機会とマテリアリティ」参照)の検討・把握を踏まえて計画・目標を立案し、それをESG委員会で審議、承認しています。活動の進捗は毎年レビューを行い、サステナビリティレポートで報告しています。
SVP2030の立案時は、関連事業部と2030年度に向けた目標を設定しました。特に環境課題については、グローバルの喫緊の課題である気候変動を中心に、進度の明確化を目指し、数値目標を設定することにこだわりました。
なおSVP2030の重点課題は、富士フイルムホールディングス社長を委員長とするESG委員会にて審議、承認され、取締役会にも報告されており、これを全社方針と位置付け、グループ一丸となって取り組みを進めています。
重点課題については中期経営計画の立案に合わせ、少なくとも3年に1度、定期的に見直す設計にしていますが、必要に応じて都度見直しをしています。
2023年度をゴールとする中期経営計画VISION2023制定の際にも、2019年度から2020年度にわたってCSR計画SVP2030の点検を行いました。この見直しの結果、「環境」分野では、目標の一部をよりチャレンジングな目標に更新するとともに、新たな目標を複数設定しました。また「健康」と「働き方」分野では、「事業を通じた社会課題解決への貢献」を目指す重点課題において、新たにKPIを設定しました。さらに都度の見直しでは、環境分野で、2021年12月にいわゆる「1.5℃目標」達成に向けて、自社からのCO2排出削減目標を引き上げました。
なお、SDGコンパスを参考に、グローバルで喫緊の課題を多く抱える「環境」分野については、環境・社会への負荷と機会を整理するため、バリューチェーンでマッピングしています。
実施時期:2019年度~2020年度(一部、環境分野は2021年度にも実施)
目標の一部をよりチャレンジングな内容にするとともに、新たな目標も複数加えました。
追加・更新された目標の一部
2030年度までに
- 自社の製品ライフサイクル全体*1でのCO2排出を50%削減する(2019年度比)。
- 使用する際にCO2削減効果の高い自社製品・サービスを社会に提供することで、社会でのCO2排出削減累積量90百万トンに貢献
- 環境負荷削減に特に優れた富士フイルムグループ「Green Value Products」を全社売上の60%にする。
事業を通じて社会課題を解決するために、次のKPIを設定しました。
- 医療AI技術を活用した製品・サービスを、2030年度までに世界196のすべての国に導入することで、医療アクセスの向上を実現する。
事業を通じて社会課題を解決するために、次のKPIを設定しました。
- ビジネスに革新をもたらすソリューション・サービスの提供により、働く人の生産性向上と創造性発揮を支援する働き方を5,000万人に提供する。
見直しの結果、重点課題として設定することに十分妥当性があると判断し、従来の内容を維持することとしました。
今後も少なくとも中期経営計画を立案する3年ごとに見直しを行いながら、SVP2030の達成に向けて、全社一丸となって活動していきます。
重点分野 | 重点課題 | 2022年度 主な目標 * 下記はすべて2030年度に向けた目標 |
2022年度 主な実績・活動 |
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環境 |
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健康 |
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生活 |
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働き方 |
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サプライチェーン | 環境・倫理・人権などのCSR基盤をサプライチェーン全般にわたり強化 |
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ガバナンス | オープン、フェア、クリアな企業風土 |
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重点分野 | 重点課題(キーワード) | 事業を通じた 社会課題の解決 |
事業プロセスにおける 環境・社会への配慮 |
主な関連セグメント/関係者 |
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環境 | 1.気候変動への対応 | ● | ● | ヘルスケア |
2.資源循環 | ● | ● | マテリアルズ | |
3.エネルギー問題 | ● | ビジネスイノベーション | ||
4.化学物質の安全確保 | ● | ● | イメージング | |
健康 | 1.アンメットメディカルニーズ | ● | ヘルスケア | |
2.アクセス向上 | ● | ヘルスケア | ||
3.疾病の早期発見 | ● | ヘルスケア | ||
4.健康増進 | ● | ヘルスケア | ||
5.健康経営 | ● | ヘルスケア(社内) | ||
生活 | 1.安全、安心な社会づくり | ● | マテリアルズ | |
2.心の豊かさ | ● | イメージング | ||
働き方 | 1.働きがい | ● | ● | ビジネスイノベーション |
2.多様な人材 | ● | ビジネスイノベーション(社内) | ||
サプライチェーン | 全般にわたり強化 | サプライヤー(+グループ全社) | ||
ガバナンス | オープン、フェア、クリアな企業風土 | グループ全社(+サプライヤー) |